筆者39歳
実技試験
音楽表現…ピアノなどの鍵盤楽器か、ギターで、既定の2曲を弾き歌い
言語表現…童話などを、子どもたちが前にいるように読み聞かせ
造形表現…提示された題の絵画を、規定時間内に描き上げる
の3科目から2科目を選択して受験
言語表現
絵本をもって読み聞かせだと思っていたら、素話(すばなし)と呼ばれる、お話を丸覚えして、子どもたちが前にいるように話す手法だった。(当時)
これは3分間分の暗記が大変だぞ、と思った。
通信講座には、言語表現用のお話が3つも入ったCDがついていた。その中から、「北風と太陽」と迷って、「ねずみの嫁入り」を選んだ。
年頃のねずみの娘をお嫁に行かせたい、はて誰がいいだろう。
太陽にお願いすると、太陽を隠す雲の方がいいという。
雲にお願いすると、雲を吹き飛ばす風がいいと。
風にお願いすると、びくともしない壁がいいと。
壁にお願いすると、壁をかじるねずみの方が強いので、ねずみがいいと。
ねずみの娘はねずみの青年と結婚して、幸せに暮らしましたとさ。
昔話の解釈は人それぞれだが、「大切な人はすぐそばにいるよ」という終わり方が好きで、この題材にした。
音楽の実技試験のために何回めかのピアノの個人レッスンを受けていたとき、ピアノの先生が「1度素話を聞いてみたい」と仰った。
えっ、ここで?と面食らったが、練習だと思って椅子に座り、先生を前にしてお話してみた。「幼稚園で読み聞かせしてるから、さすが慣れてて上手ですね」とほめられて、大変嬉しかった。
そして、園児さんの前でもやってみたら?と提案された。
読み聞かせには随分慣れてきたが、暗記した話をするのは初めてで、噛んじゃうかな?お話の途中で忘れたりしないかな?と思った。
暗記するほど何度も話して覚えているので、台詞がとぶこともなく、
じっと子どもたちが聞いてくれた。
試験本番前にこうした機会があるのは自信になった。
幼稚園で3年やってきた読み聞かせの経験が役に立つんだな、とありがたかった。
やりたいことのそばにいる大切さを感じた。
今思えば、ピアノの先生が「すばなしを聞いてみたい、園児の前でもやってみたらどうか」という提案は
かつて幼稚園の先生をしていた彼女の「人を育てよう」という教育的視点なのではないか。
教育業界に身を置くようになって気づく。
その後、先輩の先生方に何か頼まれると
「これはきっと教育的視点なんだな」と感じて、素直に受けることができている。
単に忙しいだけかもしれないが(笑)、
自分が先生としての経験も積め、教師として少しずつ伸びていくチャンスだと感じている。