スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった心理系予備校プロロゴスで知り合った たつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただいています。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
前回のお話はこちら⬇️
※物語はフィクションですが、読まれた方にその際の感覚や感情をなるべくリアルに感じ取って頂くために実際にあった出来事に似せて不適切な表現を使用しています。ご了承下さい。
島独自の文化
K中学校でスクールカウンセラーをはじめて、子どもたちと面識を持てるようになってきたけれど、自分の中ですごく気になっていることがあった。
それは保護者の存在である。
幼少時から不登校経験をしてきた自分にとって、親という精神的な居場所、『こころの安全基地』である親御さん、特に母親の存在は、子どもにとってコミュニケーションをとったり、勉強をしていく上でも土台となるもので、とても重要なものであるというのが自分の考えだった。
前回登場したS君や、その他のK中学校で相談してくる親御さんの数は本当に数えるほどでしかなかったが、全員に共通していることがあった。
それはK中学校のある島から出て生活していた親御さんか、Iターンなどで島に移住した親御さんばかりであるということだった。
つまりは島にずっと住まれている方、地域に根付かれている方はまず相談に来られなかったのだった。
島の様子というか地域文化的な状況を考えたらそれは納得できるような気がした。
たとえ集落で離れていても、どこどこの誰々がどこにおられて、何をしていて…といったことが、誰に聞いてもすぐに返ってくる…。
そんな地域で、島全体が家族のような状態であり、家の鍵などかかっていないのが当たり前…。そんな場所だった。
島出身の先生が赴任された際など、不登校傾向の子の家に普通に家庭訪問に行って、親御さんが仕事で不在でもあらかじめ許可をとって普通に家に上がり込んで本人に会いに行く…。そのようなことが普通にあるような地域だった。
スクールカウンセラー 島に根付く大変さ
そのように、隣との距離感が近く、隠し事などもほとんど持てず筒抜けな環境であれば、良い意味で悩む必要が無く、周囲の誰かが関わって解決していくような状態であったため、相談に来る必要もないというのも当然と言えば当然だった。
かといって、逆に『隠し事が出来ないことそのものが悩み』であったり、地域文化に当てはまらない状況になったとき、どこにも『行き場のない』子どもや大人が出てくるような環境でもあったと思う。
しかし、たとえそうであったとしても、その地域に住み続ける限り、その中に溶け込んで暮らしていくしかない。
その結果、第三者に相談するということなどありえないというのがこの島の地域特性であって、その中にスクールカウンセラーとして根付いていくことに対して、自分自身相当な難しさを感じていた。
実際に赴任した年に、中学校の体育祭に参加し、体育祭後にPTAが主催する保護者と教員の懇親会が行われるということで参加したが、体育祭本番も地域の運動会的な要素が多く、懇親会でも『会を進める』という枠組みもなく、久しぶりに集まった地域の顔なじみがグループを作ってそれぞれ勝手に飲み始める…。
そんな状態で、それを地域出身の先生にお話しすると、
だったら先生の方がグループに入ってきたら良いのに?!
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と真顔で言われるようなこともあった。
そんな中で、例えば不登校傾向に陥った子の気持ちを『地域の人たち』が理解できるはずもなく、また相談に来ることもなく、『入ってこないその子が悪い』と平然となってしまうのだった。
スクールカウンセラー 保護者へのお便り
そんな環境に入り込むことを模索した時、それこそ草の根的な活動だとは思ったが、毎月保護者向けにお便りを書くことにした。作っていくうちにB4用紙見開きで、左側は本からの引用。
右側は自分がカウンセリングや子どもたちと関わる中で感じたことをコラム的に書いて保護者に伝える…。
そんなスタイルが確立していった。
コラムは『大人のための子育て講座』と題して書き始めた。
最初に書いた文章は、やはり子どもと親御さん同士の関係を改善していきたいという想いが強かったことから『ほめると能力が倍になる?!』というタイトルで、以下のような文章を書いた。
生徒の皆さん,保護者の皆さん,ほめたり,ほめられたりしていますか?
ひと昔前であれば,何か悪いことをしたら,大人から『ガツン』と怒られたりしたものです。
でも,時代は変わって,今は子どもと大人の関わり方が見直されてきています。
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こんなデータがあります。
とある地域の2つの子どもの集団に,一つは出来なかったら怒る。
「○○はダメ!」とか「~したらいけない!」といった声かけをした集団。
もう一方は,出来ているところを見つけてほめる。「○○出来ているところが良いね!」「~したらもっと良くなる!」といった声かけをした集団。
数ヵ月後,ほめられた子どもの集団の方が,怒られた子どもの集団よりも明らかに素行や学力といったものが上回るという結果になったそうです。
私自身,県内のいろいろな学校に行って,いろいろな子どもと関わっていますが,何らかの問題を起こしたり,抱えていたりする子どもの生育歴や育ってきた環境を聞いてみると,
『子ども自身がほめられたいところでほめられていない』ことが多いように感じています。
これは,決して親や先生といった大人の育て方が悪いのではなく、大人自身がほめられていない…。
つまりは,大人自身が子どもたちをほめる余裕がないのが原因なのです。
今の世の中,子どもも大人も精神的な余裕が持てない時代です。
つまりは,大人もほめられていないということです。日々の生活や時間,数字といったものに追われて、いろいろと頭に来ることも多いかと思います。
そんな時こそ,子どもに限らす,相手の良いところ・出来ているところを見つけて,ほめていくことが,結果として大人自身を楽にすることにつながるのだということを覚えて頂ければと思います。
この文章の狙いは、何よりも自分が日頃からテーマにもしている、『子供の精神的居場所となる大人の確立』であったりする。
ありがたいことに今までカウンセラーとして勤務してきて、このシリーズ化した文章を読んで相談に来られた保護者の方も多くおられる。
K中学校のある地域でこのお便りを出し始めて新規で来られた保護者の方は残念ながらあまりおられなかったように思うが、自分自身が思うスクールカウンセラーの勤務形態を作り始める土台にもなっていったように思う。
たつとみ先生、今回も素敵なお話ありがとうございました!
島の文化のお話、興味深く読ませていただきました。
良くも悪くも、言動が筒抜けになってしまう閉ざされた空間で、誰にも相談できずに悩む子どもたちもきっと多くいたことでしょう。
SC、スクールカウンセラーとして赴任したものの、第三者に相談するという土壌がないなか、素敵な通信で島の文化に風穴を開けたたつとみ先生の行動力は素晴らしいと思いました。
この小さな島を(実は大きな島国である日本をも)変えていきたいという使命感すら感じました。
子どもに限らす,相手の良いところ・出来ているところを見つけて,ほめていくことが,結果として大人自身を楽にすることにつながる
ほめることが大切だとよく言われますね。
YouTubeを観てきて遅刻しがちなお子さんがいて、始業に間に合ったときに「みんな揃って朝の会を始められて、先生はとっっってもうれしいです」と言い続けていたら、ほとんど遅刻がなくなりました(笑)
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好ましい行動に反応すると、その行動が強化されるそうですね。
遅刻しないことはその子のためになるのはもちろん、
提出物もスムーズに揃うし、後から授業の補填もしなくていいし、教師側も助かります。
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ほめていくことで、「結果として大人自身を楽にすることにつながる」
という一文は、相手に行動してもらうために効果的ですね。
ある行動を提案された時、その行動をとったことで自分にも利があると判断すると実行していくそうですね。
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たつとみ先生の文章に出会われた人たちが、ほめる効果を感じて、良い習慣として広まっていきますように
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また、子ども自身がほめられたいところでほめられていない という指摘。
面談などの際、お子さんをほめている保護者さんに「そこはその子のほめられたいポイントじゃないかも…」と思うことがあります(笑)
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わたしも、日々いろんな子や人と接するなかで、その人自身がほめられたいポイントをつかみたい。
そのためには日ごろの観察や、行動の背景にある思いを読み取る力を身に着けたいな…と感じました。
たつとみ先生の希望で、感想をお待ちしています。
たつとみ先生に届きます。あたたかいメッセージを!
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感想をお寄せくださるとうれしいです!
まだまだお話は続きます。
スクールカウンセラーとしてのご体験をご紹介できて
感謝です