スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった予備校で知り合ったたつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただけることになりました。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
スクールカウンセラー 思い描いていた学校生活をとりもどす
はじめて学校という場所に生徒指導員という嘱託職員という形で働き始めた時、自分は自分の持っている引出し全てを使って関わろうと思っていた。
初めて勤務した中学校は、海沿いの某市のはずれにある、全校生徒が100人程度で各学年1~2クラスの小規模中学校だった。
勤務し始め、普通に校内巡視していると様々な場面に遭遇した。
自分自身は音楽を多少かじっていたこともあり、あまり声の出ない生徒たちの前で校歌を全力で歌ったこともあったし、パソコンにそれなりに精通していたことから先生方から映像編集を頼まれたことや、
生徒と共に授業に参加して美術の作品を一緒に作ってみたり、体育の先生が病休になり、体育祭の準備が滞っている中で、プログラムから出場メンバー表や入場~退出の並び方や進行表など一式作成したこともあった。
秋には写生大会に生徒と共に参加し、桜に囲まれた学校だったから、春の風景を想像して絵を描いたら、現実と違う風景にツッコミを入れてくる生徒もいた。
思えば、元々学校での生活にあまり良い思い出の無い自分が、ずっと思い描いて望んでいた学校生活というものを、まるで取り戻すかのように学校現場で働いていたのかもしれない。
スクールカウンセラー サッカー少年とのかかわり
そんな学校勤務1年目の夏休み明けのこと。よく話をしていた1年生の担任の先生から1人の男子生徒が2学期に入ってから登校できていないと聞かされた。
その頃には生徒の身近なお兄さん(?)的な存在になっていたこともあったが、その生徒のことはあまり気にかかってはいなかった。
しかし、自分が学校現場での勤務開始と同時に入学してきた思い入れのある学年だったから、知っている生徒ではあった。
メンタル的にも弱く、勉強はあまり好きではない。サッカー部に所属し、身体能力ではとても高いものを持っている子だった。
スクールカウンセラー 家庭訪問
校長からの要望は、家庭訪問し話が出来る関係になってもらいたいこと。そして不登校生徒として直接対応してもらいたいことだった。
担任とも連携し、家庭環境なども伺い、最初に担任と共に家庭訪問することとなった。初めて面と向かって彼と会うと共に、彼のお母さんともお話した。
ご夫婦共々、若い頃はいろいろヤンチャしてましたと語るお母さんと、学校を休むのは良いけれど、どうせなら気合を入れた休み方(?)をして欲しいと語るお父さん。そして小学4年生の弟という4人家族だった。
本人と話をすると、普通に会話は出来た。彼自身、学校の様子に興味をとても持っていた。
ちょうどその頃、同じ学年に他の学校でいろいろな問題を抱えた女の子が同じクラスに転校してきたこともあり、特にその子のことを知りたがった。
彼自身しばらく日中も家から出ない生活が続いていたが、さすがに飽きてきたのか、たまたま弟の用事で行った出身小学校に居心地の良さを感じ、保護者を通じて小学校長の許可をとり、日中は元々仲の良かった業務主事の先生の所へ通い、小学校の業務を手伝うようになった。
しかし、小学生の弟からすれば、中学生になった兄が学校に来ているのは何故かと同級生に聞かれ、居心地が悪くなり、担任等を交えて本人と保護者と話をした結果、日中は中学校の空いている部屋に来て、自分が相手をすることになった。
スクールカウンセラー 登校するときは電話が来る
彼が学校に登校する前には、必ず自分に電話がかかってきた。何を聞くかというと、登校時に必ず通らなければならない校庭と、下足場近くにある美術室で授業をしていないかということだった。
彼自身、小学校で小学生の前では堂々としていたが、中学生に見られるということを極端に嫌った。
いつも校舎一階の奥にある図書室で過ごすのが恒例となっていたが、美術室で授業しているために、校舎裏から入ったり、靴が下足場にとりに行けなかったり、体育の授業をしている間は登校できなかったりした。
そのうち段々と慣れてきて、普段遊べる彼と仲の良い生徒とは図書室で会えるようになった。昔の自分の経験から、その会う生徒には絶対に教室には誘わないようにお願いをしていた。
みんなが出てる時、学校へ行っても良いかな?
ある時のこと、全校で近所の大きな公園に校外学習に出ることになった。それを知った彼が自分に
皆が校外に出ている時、
自分は学校へ行っても良いかな?
と言ってきた。まだ学校現場の経験が浅いが、不登校の子への思い入れが強い自分は、この機会は逃してはならないと感じ、学校に来れるようにすると約束した。
今であれば、許可が出るか聞いてみる等の連携が必要なことは当然であるが、せっかく学校から遠ざかっている子の申し入れを何としても受け入れたい。そんな思いだった。
結果として自分と彼とで学校へ行くことが出来たのだが、最初に教頭に伝えると
それは良いね!
という返答が返ってきたが、彼の要望に対して校長からは
学校の安全上全校生徒が全員校外学習に出るのが当然であって、個別に学校を開けることは出来ない
と言われ、それに教頭も続いた…。
不登校の子は学校に行かないのではなく行けないのだということ。そうした彼が学校に行きたいと言っている。
そうした状況を目の前にして、どうしても彼自身を学校に来させてやりたい。そうした想いを自分は校長に再度伝え、自分の所属する教育委員会にも相談した。
校外学習の前日、教頭から校外学習の際に自分だけ学校に残り、不登校の彼が学校に登校してくるのを待つという条件で彼の要望が受け入れられた。
教室に行ってもいい?
自分と彼以外いない学校で、彼はとてもはしゃいでいた。
教室に行っても良い?
普段学校に来ても一階奥の図書室にしか行かない彼が、階段を上がって1年生教室に行きたがった。自分の席に座り
あ~、久しぶり!
という彼は爽快そうな顔をしていた。
その日から、彼が学校にやってくる回数は少しずつ増えていった。
そして3学期も最後の大掃除の日。彼は普通に登校してきた。そして誰よりも頑張って掃除をしていた。周りの同級生たちと関わる彼は、今まで休んでいた子には見えなかった。
高校も無事卒業 社会人に
その後の彼は、興味を持っていた転校生の彼女と付き合うようになり、サッカー部でも中心となって活動し、大きく風邪等をひいた以外は学校を休むことなく3年生まで過ごし卒業していった。
彼の卒業後も何度か彼と会って話すことはあった。結果として彼のお父さんと同じようにヤンチャな子に変わっていき、会うたびに何とか入学した高校を辞めないように説得しながら関わり、高校も無事卒業。今は社会人となって働いている。
学校現場に自分自身が勤めるようになって関わった、最初の自分と同じ『不登校の子』との関わりはそうして終わった。少しでも彼自身の居場所になれたと思ってもらえたならと思う。
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たつとみ先生、今回も素敵なお話ありがとうございます✨
「せっかく学校から遠ざかっている子の申し入れを何としても受け入れたい」というたつとみ先生。
…
教頭はOKを出すも、校長の立場での保身、そして教頭もそれに続く…というやりとりは、学校の古い体質そのものだなあと、笑
…
この少年の心の動きから機会を捉え、誰もいない学校→教室へ。これを機に学校に来る頻度が増え
そして中学を卒業しても、高校生活を続けるように働きかける
…
それまでの少年や家族との信頼関係ももちろんですし、たつとみ先生の熱意や機転がなければ、この少年はうまく学校に通うことはできなかったかもしれず、社会人として生活していくことも難しかったかも
…
本当に良い事例を紹介していただきました。
不登校の子どもたちに出会ったら、こんな風に子どもたちにかかわっていけたらと思いました。
ありがとうございます。
「学校での生活にあまり良い思い出の無い自分が、ずっと思い描いて望んでいた学校生活というものを、まるで取り戻すかのように学校現場で働いていたのかもしれない」と仰っています。
第一話で、長く辛い学生生活を送っていたたつとみ少年を思い、この一文に涙しました。
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人は誰でも、過去の辛い経験を良い経験で上書き保存できるように、人生の後半を折返すのかもしれません。
(私ごとですが、過去に先生になることを反対されたものの教員免許をとり、人生折り返しの40歳で教員になって今に至ります)
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まだまだお話は続きます。
スクールカウンセラーとしての体験を紹介できて
感謝です