鍵盤
素敵なせんせいをめざすあなたに
自ら演奏をする
採用が確定しない年度末。
自分では動けない「待ち」の時間には、
拙いピアノの演奏で気持ちを治めてきた。
車で演奏を聴く
通勤途中で聴いた、
プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番
若かりし頃の
マルタ・アルゲリッチの演奏。
好きだけど筆者には弾けない難曲(笑)
次の採用が本決まりになるまでの苦しい期間に
サブスクで取り込んで繰り返し聴いては
焦りを鎮めてきた。
ピアノ教室
幼稚園でピアノを弾いていた
担任のF先生に憧れた筆者。
小学校に上がると、
近所のピアノ教室に自転車で通うようになる。
ピアノのA先生は当時もう御高齢だったが
色が白く背筋がピンと伸び
長いスカートをはいていて
筆者の地域に住む同年代の女性たちとは
一線を画していた。
鍵盤 発表会
地域の貸し切りの小さなホール。
年に一回開かれるピアノの発表会に、
幼い筆者も何回か名前を連ねていた。
ちょっとおすましした服を着られるのが
うれしかった。
毎回、お弟子さんか教え子たちか、
A先生には豪華な花束が何人もから渡され、
幼な心にも
この先生、きっとすごい人だ…
ドイツに長く留学していたと後に聞いた。
佇まいが違ったのはその辺りなのだろう。
鍵盤 音色が落ち着く
中学に上がると吹奏楽部が忙しくなり、
ピアノは辞めてしまったが、
音楽の楽しさを教えてもらったように思う。
怒られた記憶がない。
個人で教えておられたので、
◯◯グレードなどのピアノの級も
受けることがなかった。
いろんなジャンルの音楽を聴いたり、
演奏したりしてきたが、
筆者がやっぱり落ち着くのは
ピアノの音色とクラシックのフレーズ
なのである。
教本
楽譜の載ってあるものは捨てられない。
実家から持ってきた古いピアノ教本。
バイエル、ブルグミュラー、ツェルニー、
ハノン、ソナチネ、ソナタ…
少し黄ばんだページをめくると、
A先生の鉛筆の筆跡がある。
幼い娘がピアノを始める時、
せっかくなので、
持っておられる教本を使いましょう!
A先生の走り書きの横に、
娘のピアノの先生が鉛筆の色を変えて書き
それらの教本を使ってくださった。
世代を超えて音楽がつながっていくようで
粋なはからいに感謝した。
鍵盤 連れてってほしい
娘のピアノレッスン歴が長くなり、
そろそろ筆者のキーボードを卒業して、
実家からピアノを持ってこようか、
はたまた電子ピアノ購入かと検討している頃
ご実家のピアノが、連れてってほしいと
言っています。
筆者の祖母が用意してくれた
アップライトのピアノだったので、
ピアノを擬人的に喩えた彼女の感性に
大変驚いた。
重いピアノを運ぶ運搬は数人がかりなので
一つでも意外に高額。
床の補強代や、毎年の調律代が
定期的に必要になるからと
主人の反対に遭って、
実家のピアノを連れてくる夢は叶わなかった。
クラビノーバ
クラビノーバとは、
ピアノの音色やタッチをできる限り似せた
電子ピアノの種類である。
リビングには現代のクラビノーバが鎮座する。
筆者が保育士資格をめざし、
音楽での受験を選んだときも、
幼稚園教諭免許の音楽の単位をとるときも、
ずっと助けてくれた。
今でも、筆者や娘の心が揺れた時の
おともをしてくれている。
ピアノは実家に置いてきてしまったが、
ピアノの音色は、
これからもそばにあってほしい。
…
音楽の楽しさを教えてくれたA先生と
そばにいてくれるピアノに
感謝である。