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スクールカウンセラーになる(13)別室の卒業式 たつとみ先生

スクールカウンセラー

素敵なせんせいをめざすあなたに

管理人
管理人

管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった心理系予備校プロロゴスで知り合った たつとみ先生。

スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただいています。

類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。

前回のお話 ⬇️

保護中: スクールカウンセラーになる(12)女生徒と個人塾 たつとみ先生

スクールカウンセラー I君と相談室

中3のI君は、身体の大きな男の子だった。他の生徒には知らされていなかったが、彼には教室に上がれない理由があった。

それは、この年齢にして統合失調症と診断を受けているということだった。

この学校のベテランSCであり、医療機関にも勤務するM先生の判断で、

M先生
M先生

I君自身の状況から、あまり多くの刺激を受けるような状況を作らない方が良いでしょう

ということで、I君は忠実に別室当校を続けていた。I君と同じ中3であるT君とK君はとても仲が良く、学習時間以外や放課後、休みの日などよく一緒に遊んでいるようだった。

I君にとって別室当校は特には居心地の悪い空間ではないようだった。

しかし、時折起こる出来事があった。それは、I君が別室の隣にある相談室に引きこもってしまうことだった。

I君が調子を悪くするのは特に決まりが無く、いきなり表情が曇った。そして別室の隣にある相談室の中に1人入り、鍵を内側からかけて閉じこもってしまうのだった。

自分が別室にいない時もI君は相談室に閉じこもってしまうことがあり、よくK君から

Kくん
Kくん

先生!またIが閉じこもってる…

と訴えてきていた。それは卒業が近づくにつれて増えているように感じられた。

相談室の鍵を外から開けることも出来るのだが、あえて開けずに落ち着くのを待つようにし、別室当校をしている他の子たちにも、外から呼びかけたりしないようにしていた。

外からI君の様子を伺うと、おそらくだが、壁に頭をゴンゴンと押し付けている様子が伺えた。たまにやり過ぎたのか、I君の額が赤くなっていることもあった。

3学期も終盤となり、卒業式が近づいてきていた。I君はM先生の判断で、卒業式には出席しないことが決まっていた。ただ、I君は卒業式に出たいとずっと思っていたことから、保護者席の後ろに座り、卒業式に参加することになっていた。

I君は

I君
I君

卒業式で卒業証書受け取ってみたかったんですよね~。

と自分に何度か話していた。

スクールカウンセラー 別室の卒業式

そんなI君の言葉を聞いていた自分は、ふとあることが頭に浮かんだ。

たつとみ先生
たつとみ先生

別室でこの3人の卒業式をしてあげたらどうだろうか?!

卒業式当日、「参加しない!」と断固として拒否していたT君がどうなるかわからなかったが、K君は他の生徒と共に卒業証書を受け取りに卒業式に参加することが決まっており、自分も参列することになっていた。

自分は、この計画が実行できるであろうAさんに声をかけた。

たつとみ先生
たつとみ先生

この別室の3人の卒業式を、この部屋でやりたいんだけど、協力してもらえるかな?

Aさんには、別室当校の三人に、この別室での卒業証書を作って、I君に証書を受け取る場面を作ってあげたいということも話をした。

Aさん
Aさん

ってことは、たつとみ先生が校長先生みたいにお話もしてくれるんですよね?!

とAさんは、少し意地悪そうな顔をして自分に笑って言った。

たつとみ先生
たつとみ先生

じゃあ、在校生代表挨拶もするかい?

Aさん
Aさん

いや、こっちは準備が大変なんで、先生だけお願いします!」

こんなやり取りをAさんとしながら卒業証書は自分が作っておくから、その他の準備をAさんとTさん、Mさんの2年生3人にお願いして卒業式当日をむかえた。

卒業式では自分はビデオカメラ係を任されていた。人数の多い学校だったので、保護者に証書を受け取る我が子を保護者席前に設置したスクリーンに映し出すという計画が立てられ、配線からカメラ操作までを機械にたまたま詳しかった自分が任されたためだった。

そのお陰で式の最中、会場内を行き来することが出来、歳々I君の様子を見ていた。

I君は保護者席の後ろでI君のお母さんの横で背筋をピンと伸ばして座って式に参加していた。渋っていたT君も、担任の先生が寸前で何とか説得し、渋々証書を受け取っていた。

あと、実際に証書を『受け取る』ということをしていないのはI君だけだった。

たつとみ先生
たつとみ先生

この後、証書を受け取らせてあげるからな!

内心そう思いながらカメラ操作を行い、無事卒業式が終わった。

相談室に3人の卒業生を連れて戻ってくると、扉が閉まっていた。ノックをすると…

Aさん
Aさん

ちょっと待って!!

と慌てたAさんの声が聞こえた。

3人の卒業生と少し話をしながら待っていると、K君が

Kくん
Kくん

先生、何を計画してるん?!

といろいろ聞いてきたが、はぐらかして待つこと数分。ようやく扉が開いた。

Aさん
Aさん

それでは卒業生、入場

Aさんの掛け声と共に、厳かな卒業式とは違った別室の子たちらしい軽快な曲が流れてきた。3人の卒業生と卒業式風にセッティングされたいつもの別室に入り、3人は2年生たちに誘導されて座席についた。

Aさん
Aさん

じゃあ、相談室の卒業証書を授与します!

司会進行役をやってくれたAさんの声と共に3人に、青空に飛行機雲の絵を描いた手作りの卒業証書を手渡した。I君は満面の笑みで、お手本のような受け取り方で証書を受け取ってくれた。

後ろで卒業証書を受け取りたいと思っていたI君の気持ちを知っていたI君のお母さんが涙ぐんでいるのが見えた。

Aさん
Aさん

たつとみ先生からの言葉です!

そうAさんから言われて、なぜか自分も緊張したことを覚えている。どんな言葉をかけようか、実は全く考えていなかった。

ただ、この部屋に通っていたことも、上の教室に上がっていた子も、今までもこれからも関係ない。自分の思った通りに自分のやりたいことを見つけて進んで行ってくださいと話をした。

割と最近だが、たまたまI君のラインに友達ではないかと通知が入ってきた。そこには

『死ぬまで 死ぬほど 好きなバンド』

と書かれ、彼がギターを持つ写真が写っていた。

I君とは連絡は取っていないが、好きなものを見つけて邁進する彼の姿が少しだけ見られて嬉しかった。

https://sensei.style/Japan/wp-content/uploads/2022/10/3EEDB0A0-5C8A-4E9E-BE7F-483423451946.png

たつとみ先生、ありがとうございます。

別室登校のI君のために、別室での卒業式を思いついたたつとみ先生。

本当に素敵です。

前回のお話にも登場した、利発なAさんに計画を持ちかけていて、2人のやりとりもハートフルですね。

たつとみ先生から卒業証書を渡されたI君。

I君のお母さんのことを思うと、胸がいっぱいになります。

LINEのアイコンやプロフィールで、I君の近況を知るなんて、今どきですね。

…毎回連載させていただいて思うのですが、前回までの主人公や登場人物が、次の回ではキーパーソンになっていて、一話完結の学園ドラマの一場面を観ているようです。

「3年B組◯八先生」(←世代バレちゃうw)

「教師◯ん◯ん物語」「GT◯」「ROOKIE◯」などなど…。

スクールカウンセラーたつとみ先生

ドラマ化したらいいなー、笑

スクールカウンセラーのドラマは今のところないはずなので、時代の先を行ってます♩

主演は誰がいいかなー。紅白司会の大泉洋さんとか?たつとみ先生も大ファンだそう、笑

原作 たつとみ先生

起案 瀬野ゆりか とかで、笑

これからも心温まるお話、楽しみにしていますね

https://sensei.style/Japan/wp-content/uploads/2022/10/3EEDB0A0-5C8A-4E9E-BE7F-483423451946.png管理人からのお願い

たつとみ先生の希望で、連載記事の感想をいただけたらありがたいです

たつとみ先生に届きますので、温かいメッセージをお願いできれば

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コーヒーと文房具のイラストのヘッダーです 

たつとみ先生
たつとみ先生

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まだまだお話は続きます。

スクールカウンセラーとしての体験を紹介できて

感謝です