スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった心理系予備校プロロゴスで知り合った たつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただいています。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
前回のお話はこちら⬇️
※物語はフィクションですが、読まれた方にその際の感覚や感情をなるべくリアルに感じ取って頂くために実際にあった出来事に似せて不適切な表現を使用しています。ご了承下さい。
スクールカウンセラー どう対応すべきか?!
K中学校の近所に同じ学区内のK小学校があった。スクールカウンセラーとして赴任して3年目ぐらいだったか、K小学校へ挨拶に伺った際、校長先生からこんな相談を受けた。
1年生に生まれつき両手の不自由な子がいるのですが、リコーダーなどの指導が今後入ってきた場合、どのように対応すれば良いでしょうか?
先天性四肢障害を持つIさんという女の子だった。
両手とも他の子とは違う手の形をしており、左手の方が動かしやすく、実際に授業の様子を見に行くと、器用…というしか表現のしようのない手の使い方で、書くことや折り紙をすることなど、何の遜色もなく、むしろ文字に関しては他の児童よりも綺麗なぐらいだった。
クラスでも非常に明るく活発だったのを覚えている。校長先生は、全校児童でリコーダーの指導を無くす等を考えておられる様子だった。
指の不自由な子のためのリコーダーを作成してくれるところもあったが、とても高価であったため、スクールカウンセラーの自分からお伝え出来たことは、ご家族や出来る限り本人の希望を聞いて対応してくださいということぐらいだった。
スクールカウンセラー 小学生が中学生になって・・・
K小学校では、その後リコーダーではなくピアニカを音楽に取り入れていた。確かにピアニカであればIさんも弾くことが可能であった。
それはK中学校区が統廃合して小中一貫校になっても変わらず、リコーダーを持った子を見ることは皆無だったので、おそらくIさんの一件以来、伝統的に続いていることなのだと思う。
今でこそ中学校区にある小学校は中学校区担当のカウンセラーが定期的に訪問する日程を年度当初から組まれていたりするが、
当時はまだ小学校へスクールカウンセラーが定期的に訪問するということは定まっておらず、必要に応じて小学校へも訪問することが文言として記載されているのみで、小学校からの依頼が無い限り、なかなか小学校へ赴くということが無かったのが事実である。
その結果、Iさんと再会したのは彼女が中学1年生になり、全員面接で面接した際であった。その頃には地域の小中学校5校が統廃合され、小中一貫校となっていた。
それまでIさんのことは記憶の片隅にはあったが、特に相談依頼もなく、どうなったのかは知らない状態であった。 全員面接前に教室を見て回った際にハッとなった。
ちょうど数学の授業だったのだが、小学校1年生の時も『器用』であったが、誰よりも綺麗な文字を書き、定規を使うことなど他の生徒と遜色なく授業をこなす姿があった。
スクールカウンセラー 校長と謝罪に
Iさんは特に何も問題なく学校生活を送っていたが、同じ学年にはM君というADHDの診断を受けた子がおり、学校は対応に苦労していた。
男性の大人には話がしやすいようで、幸いにも担任でベテランのY先生やSCである自分とは普通に話したり関わったりすることが出来ていたが、暴言を吐いたり、授業中に教室を飛び出してトイレに籠ることが頻繁に起こっていた
そんなM君とIさんの間で事件が起こった。ちょうど体育祭も控えたある日、競技の練習を終えた時、練習でも負けてしまったM君が興奮し、たまたまその競技で失敗してしまったIさんに
お前のせいで負けたんだ!!
この◯◯◯が!
と暴言を吐いたのだった。
学校の規定で、問題が起きた際には保護者に連絡することが定められていた。
M君のお母さんは頻繁に面接に来られていたので対応方法などを具体的にSCからもお話することが出来たが、
Iさんのお母さんは特にIさん自身の手のことで今までも神経質になられることが多く、学校で対応を考えた結果、M君の家庭とトラブルにならないようにするためにも学校内で起きたことでもあったので、校長と担任とでiさん宅に謝罪に行くことになった。
その際、Iさんのご家庭とつながる意味でもSCとして同行させてもらった。
スクールカウンセラー 対応に成長を感じる
最初、Iさんのお母さんの表情がとても硬かったのを今でも覚えている。校長はIさんとご家族に不快な想いをさせてしまったことを謝罪した。お母さんはIさん自身がどう思っているのかをとても気にされていた。
程なくしてIさんがやってきた。傷ついているかもしれない‥。その場にいる誰もがそう考えていた。ところが謝罪する校長に対してIさんの反応は誰もが想像しないものだった。
えっ⁈そんなことで謝りに来られたんですか?
明らかに面食らった表情でIさんはそう言い、こう続けた。
M君のことは昔からよくわかってますし、私は全然気にしてないので先生方も気にされないで下さい!
笑顔でそう答えるIさんに、お母さんは逆に涙ぐんでおられた。
あとからお母さんにお伺いすると、Iさん自身がここまで成長してくれていたことに感極まったのだそうだった‥。
その後、Iさんは頻繁に相談室に友だちと遊びに来るようになった。恋愛話から勉強の話など、いろいろな話を聞いた。
卒業後、高校に進学し、成人して栄養士として勤めていたが、働き過ぎて1度病休し、その後縁あって再会して、現在は自分の知人が経営する放課後デイケアを紹介し、子どもたちの中で働いている。
お母さんとも再会し、あの頃のことを笑顔で話せるようになっていたのが印象的だった。
たつとみ先生、今回も素敵なお話ありがとうございました!
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たつとみ先生はスクールカウンセラーとして、
ご家族や出来る限り本人の希望を聞いて対応してください
と仰ったように、本人の意志が第一優先、その次がご家族の希望と考えています。
良かれと思って動いたことが、意に沿わない場合もあるので、大切な視点だなと改めて感じました。
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.リコーダーを鍵盤ハーモニカに変える…音楽集会を学校全体で取り組める内容にした、この校長先生の気づきや英断は素晴らしいですね。このお子さんの入学にあたり、不都合はないかと校内で話し合って、その意見を取り上げたのでしょう。
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学校は前年度からの踏襲も多く、なかなか新しい風を入れにくい雰囲気があります。上下の序列も厳しいと感じます。
なので学校のトップが動いてくださることは、学校全体を変えていく大切な要素になると思っています。
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(ピアニカは商品名だと、この仕事に就いてから知りました笑 メロディアンという名前のものもあります。学校では、鍵盤ハーモニカ、鍵ハモと呼んでいます。)
ちなみに、LD傾向(読み書きにやや支援が必要)や外国籍のお子さんが多い学年の場合、カラーテスト(成績に関与する大きなサイズの業者のテスト)は漢字にカナをふった、ルビ付きテストを業者さんに発注し、学年全体で使用を検討します。
LD傾向の子たちだけに、ルビ付きテストを配布するのではありません。
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.このIさんだけ鍵ハモ、LD傾向の子だけルビ付きテスト、にしたら、「ボクだけ、私だけ違う」と自己肯定感を揺るがす原因になるでしょうし、周囲のその子に対する反応も気になります。
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学校側の合理的配慮が重要だと感じました。
そして、Mくんの暴言に対するIさんの対応が素晴らしすぎて…。
今までの苦悩や葛藤も計り知れないはず、心無い一言で悔しい思いをしてきたこともあるでしょう。
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Mくんの特性をよく知り「気にしていないから、先生方も気にしないで」という相手を気遣うIさんの神対応…
中学生とは思えないほどです。
立派に成長したIさんのお母さんの涙もよく分かります。
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いい大人でも、文句を伝えに来られたり、聞こえるように悪いウワサをされたり…、悲しい気持ちになったことがわたしもたくさんありました。
- まずはその場から離れる
- 相手がもつ問題だから気にしない
- 励ましてくださった方々への感謝
ということを学ばせていただきました。
ありがとうございます!
たつとみ先生の希望で、感想をお待ちしています。
たつとみ先生に届きます。あたたかいメッセージを!
下のGoogle formか、瀬野ゆりかのInstagramまで。
感想をお寄せくださるとうれしいです!
まだまだお話は続きます。
スクールカウンセラーとしての体験をご紹介できて
感謝です