スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった予備校で知り合ったたつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただいています。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
スクールカウンセラー 初めての転勤
生徒指導員として勤めだして、初めて転勤というものがあった。前回忘れられない学年のお話をしたけれど、その学年が3年生になる年度だった。
(だから正直、転勤してしまうのが悔しくて仕方なかった‥)
転勤した学校は、それまでとは少し規模の大きな学校だったが、自分が感じた最も異なっていたのは、全てではないが先生方が威圧的だと感じたことだった。
正直、威圧的にならざるを得ないというのが正しかったのだとは思う。それだけその学校は荒れていた。
前任校で仲良くさせてもらっていた非常勤の美術の先生が、自分の転勤してきた中学校に途中から転勤してきたが、
この体制で授業することは出来ない。子どもたちに申し訳ないが、他の学校からもお呼びがかかったから、自分はそちらに行くことにする…
と、途中で投げ出すほどだった。
その中で忘れられない子どもがいる。
特に荒れている学年であった中学2年生の中にFさんという女の子がいた。
とある授業中に自分が校内を巡視している時、そのFさんが移動教室で出払っている自分のクラスにスッと入っていくのが見えた。自分はすかさず教室に入り声をかけた。
どしたの?
と声をかける自分に、一瞬ハッとした顔で振り返り、その後普通の顔になり
別にぃ〜
と言ってFさんは教室後ろのロッカーの方へ歩いていき、ロッカーの上に座った。そして何分間か何気もない会話をしてからFさんはこんなことを聞いてきた。
ねぇ、私が授業抜け出してきてるのになんで注意しないの?
この学校に転勤してきて、学校全体に充満する威圧的な空気に嫌気の刺していた自分は、ずっとこの空間にいるこの子たちはもっと嫌気が刺しているだろうと思っていた。
だから自分はこんな言葉を返した。
そう言うってことは授業抜け出したらいけないって知ってるんだろうから、別に注意する必要は無いと思うからね
そう言うと彼女は何か思った風な表情を浮かべ
ふ〜ん、単に機嫌取ってるだけかと思った
と言うと、授業に戻るからと移動教室に戻って行った。
その次の日。朝学校に出勤してきた自分の後ろから、自分の背中に強烈な張り手を喰らわせながら
おっはよぉ〜!
という大きな声が響いた。
Fさんだった。
それ以降、何かと彼女は自分に話しかけてくる様になったのだった。
荒れている家庭
もう1人の忘れられない子どもは、同じ中学校区にある小学6年生の男の子だった。
7人兄弟姉妹の5人目で、4人目の兄が中学1年生、6人目の妹が小学2年生、7人目の弟が1年生で、どの子も似た顔立ちをしていて小柄で痩せている子たちだった。
家庭的にも要注意とされていたようで、中1の兄が体育の時間に柔道をしていた際、まだ受け身もしっかりと教えられていない時にふざけて腕を骨折し、引率の先生が足りなかったことから養護の先生とその子が病院へ付き添って行った際、既に病院には両親が来院しており、父親が自分を担当の体育教員と勘違いして、胸ぐらを掴みかけた。
えらく来院が早いなと思っていた中で、たまたまその両親の会話を聞いたところ、両親ともパチンコ屋に居たので到着が早かったのだとわかった。あとから生活保護家庭だということも知った。
そんな家庭で育ってきた中1兄に対し、中学校の校長は骨折のサポートという名目で自分を彼の席の横に居るよう命じてきた。いろいろと問題を起こす彼を実質監視させるためだった。
自分はあくまで『骨折のサポート』に徹したため、今まで通りトラブルは起きた。
校長は問題視していたが、あくまで大人は子どもの居場所となるべきだと考えていた自分とは、最後まで合わなかったと思う。
それに対して小学校は違った。小6の彼との関わりは今でも忘れない。小学校長はこの家庭の子どもたちが小学校を卒業するまでは自分が校長をし続けると教育委員会に訴え、再任用で校長をし続けた人情溢れる人だった。
小6の彼は低学力で、教室もよく抜け出して学校内をウロウロしていることがよくあった。追いかけると逃げ、追いかけないとこちらの見えるところをウロつく。
担任は彼が小5の時からしっかりと彼の声を聞きつつ関わり続けているベテランの女の先生。
そしてもうひとつの6年生学級担任の男の先生と教頭先生が父親的に彼に関わっていた。
そしてカウンセラー的な関わり方を生徒指導員として行っている自分をかってくれたその先生方が勤務する際には、彼と関わる時間がとても多く、教室に行かない時は別室や校内で彼と関わる時間が多くあった。
彼とのやり取りでよく覚えているのが、自分によく
〇〇してもいい?
と聞いてくることだった。
割と高めな教室内の台の上から飛び降りて良いかとか、自分がいつも胸に刺しているペンを手に取り、これを折って良いかとか、授業時間中に大声で歌って良いかとか、その全てはやってはいけないことばかりだった。
思い返せば発達障害的な部分もあったが、明らかに愛着障害的に大人との関係、精神的な居場所を欲している行動ばかりだった。
そんな献身的な小学校の体制の中で過ごした彼は、6年生の後半からはあまり教室から出なくなっていった。卒業間際、彼は自分にこう言った。
中学校でもよろしくね!
中学校長と合わなかった自分は、その1年間で転勤となってしまった。
後から聞いた話だが、中学校の新入生歓迎会で、新入生に出すクイズの問題の中に
中学校にいる先生の名前は誰でしょう?
という問題が出され、
たつとみ先生!
彼は自分の名前を言ってくれていたそうだ。
今、あの家庭の子どもたちがどうなったのかわからない。
中学校に進学していると思っていたのに
居なかった自分が、それでも小学校時には精神的な居場所となっていたことがあったのだと良い方に感じて大人になっていてくれればと今でも思っている‥。
たつとみ先生、今回もありがとうございます。
荒れた学校にも、勿論、勤務経験がおありですね。
教室に1人で戻ってきた女生徒との対応は、さすがです。
頭ごなしに注意するのではなく、「抜け出すのは良くないことだと、もうわかっているから注意はしないよ」その子自身を尊重している対応だと感じました。この人なら!と心を開いて、翌朝からあいさつをしてくるようになったのでしょうね。
…
威圧的な学校と、親身な学校。この対比は
現代の学校を象徴しているようです。
管理職の考えによって、学校の雰囲気も変わるように思います。
…
絶大な信頼のたつとみ先生、小学校を卒業して次の中学にもまだいてくれるはず…と名を挙げるエピソードは可愛いですね💕
きっと彼らきょうだいにとって、いえ、他の児童にとっても、たつとみ先生たちのご尽力でこの小学校は精神的な居場所になっていたことでしょう。
…
家庭支援の必要な子どもたちはその子の問題だけではないので、学校でも特に配慮をしています。
朝ご飯がなくいつも空腹、物が揃わない、情緒が不安定…なかなか改善されず、何とかできないものか…と同僚の先生たちと苦心しています。
たつとみ先生の希望で、連載記事の感想をいただけたらありがたいです
たつとみ先生に届きますので、温かいメッセージをお願いできれば
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コーヒーと文房具のイラストのヘッダーです
感想をお寄せくださるとうれしいです!
まだまだお話は続きます。
スクールカウンセラーとしての体験を紹介できて
感謝です