スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった予備校で知り合ったたつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、スクールカウンセラーをめざす経緯や体験を連載していただいています。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
スクールカウンセラー 別室とは
K君は別室登校の生徒の中で1番背が高く、人見知りもせず、初めてやってきた自分に1番最初に声をかけてきてくれた中3の男の子だった。
不登校傾向の子は、他の生徒と同じ時間に登校してくるのを嫌がることが多いのだが、K君は私が出勤する時には既に相談室に登校していて、窓から出勤してきた自分の車が走ってくるのをよく見ていた。
K君は車好きだったこともあり、同じく車が趣味な自分が当時乗っていた青色のロードスターを見るのが目的だったようだ。
K君はいつも制服に猫の毛を付けてきていて、割と仲の良かったTさんから
K兄ん家は、3匹猫を飼ってるんだよ
と教えてもらったこともある。
自分も猫好きだったこともあり、1年で生徒指導員での関わりを退いた後も彼と一つ下の彼の妹の家庭教師として、家族ぐるみのお付き合いとなり、現在も交流があり、大人になってからは何度か飲みに行ったこともあるぐらいだ。
スクールカウンセラー 相談室に
そんな彼とのエピソードはたくさんある。
それなりに生徒数の多い学校だったことから、相談室は時折、生徒指導の場として使われることがあった。
ある日、問題行動が多くて有名なY君が問題を起こした際、教室にも戻すこともできず、自分以外の先生が1人付くという条件で、結果として相談室にいることになった。
最初に難色を示してきたのがK君だった。Y君はとても『有名な』生徒だったので、K君は自分にY君が教室にいることの怖さを訴えてきた。
正直、Y君が別室にやってくることに関して、学校はこの部屋を何と考えているのだろうと思ったが、今ある状況で何とかしていくしかない。
自分はY君からいろいろと話を聞いてみた。
野球のクラブチームに入っていること。自分は期待されているのだとの訴え。煙草について思うこと。言葉の端々に出てくるいろいろな人に対する批判…。
話を聞いていると、Y君は行き場もなく自信もない子なのだなと感じた。
キャッチボール
そんなY君がやってきて2日目、K君との関係に変化が起こる出来事があった。グラウンドでキャッチボールがしたいというY君に付き合って、自分がキャッチボールをしていた。
自己主張の一環として、ボールを投げる自分に対して批判が入ってくるY君だった。
ちょうどその横で、同じく野球が好きなK君とT君がグローブを持ってやってきた。Y君がいることに少し固まる二人…。
しかし、ある程度K君が良い球を投げるのを知っていた自分は、Y君とキャッチボールをさせてみた。そんなに遠投できないだろうと近づいてくるY君にK君の投げる鋭い球が飛んでくる。
おっ?!やるじゃん?!
だんだんとK君と距離をとるY君。二人の行うキャッチボールの心地よい音がグラウンドに響いていた。
今思えば、それを境にY君は少しずつ人を認めるということが出来るようになっていったように思う。
大人になっても自意識過剰なのは変わらなかったようだが、一時ではあるが、K君と同じ職場で働いていたのだから、世の中何がきっかけになるかわからないなと思う出来事だった。
俺、数学を頑張りたい!
Y君だけに限らず、K君にも変化が起きていた。自分に対しては人見知りしなかったK君だが、元々引っ込み思案なタイプだった。
2学期もだいぶ過ぎ、中間テストが終わってしばらくしてからだったと思うが、K君がいきなりこう言ってきた。
俺、数学を頑張りたい!
元々勉強に対してあまり取り組む姿勢を見せていなかったK君だったが、相談室メンバーが増え、怖かったY君と普通に関われたことなどから、もう一歩何か自分に自身が持てるものが欲しいと考えた時、自分は数学なら少し点が取れるかもしれないと考えたようだった。
それから期末までの間、ことあるごとにK君は自分に数学の質問をしてきた。そして期末テストの日を迎えた。
今までの点数は一桁を脱するかどうかというところだったが、テストが回収されて割とすぐに職員室でK君の頑張りを知っていた数学の先生が自分のところへやってきた。
たつとみ先生…、これ…。
とK君の答案を真っ先に持ってきてくださった。34点だったのを今でも覚えている。
採点する時、手が震えましたよ!
と数学の先生は笑っていた。
答案を返してもらったK君が、ものすごく喜んでいたのは言うまでもない。
スクールカウンセラー 生徒からの結婚報告
K君は卒業後、通信制サポート校に進んだ。それと同時にお母さんから自分に家庭教師をして欲しいを頼まれ、彼の一個下の妹を含め、今でも連絡を取り合っている。
就職後、紆余曲折したが、高校生の発達障害を抱える息子さんを持つ、自分と歳があまり変わらない女性と結婚したと連絡を受けた時はさすがに驚いた。
ウチの奥さんに先生を紹介したいんよ!
といきなり電話口にその奥さんが出てきたからだ。
しっかりした方で、いろいろお話した最後に彼女はこんなことを言ってくれた。
K君の人生に間違いなく影響を与えた先生なんですね!
その時、嬉しさだか何だかわからない感情になっていた…。
K君との関わりは、そのまま別室当校のあり方を考えることにも自分の中ではつながっているように感じる。でも、その別室当校の場での関わり方の結論の一つにK君の今があるのだろうとは思う。
たつとみ先生、今回もありがとうございます。
問題行動が多くて『有名な』Y君を、別室である相談室で受け入れることに対して、難色を示す生徒がいるのは自然な感情だと思います。
.
でもそこで、たつとみ先生は子どもたち同士をつながるようなかかわりを仕掛けておられて、素晴らしいなと感じました。
.
野球には自信があり、相手をなめて距離を短くとっていたY君。思いのほか、いい球を投げるK君を認めて少しずつその距離を離していく…
キャッチボールのやり取りは映画のワンシーンに出てきそうで、少年2人の心のキャッチボールにも感じました。
.
突然、やりたかった数学の勉強に目覚めたK君。
数学は積み上げが必要で、なかなか点が取りにくい教科。
この経験は「頑張れば数字に出るんだ」とK君の自信につながったことでしょう。
.
生徒から結婚報告があるのは、先生冥利に尽きますね!
(管理人はまだ教え子たちがその年齢に達していないので、結婚報告はないです、笑)
たつとみ先生の希望で、連載記事の感想をいただけたらありがたいです
たつとみ先生に届きますので、温かいメッセージをお願いできれば
下の参考リンクをタップしてGoogle foamからご入力を✨ ⇩
コーヒーと文房具のイラストのヘッダーです
感想をお寄せくださるとうれしいです!
まだまだお話は続きます。
スクールカウンセラーとしての体験を紹介できて
感謝です