スクールカウンセラー
素敵なせんせいをめざすあなたに
Ⅼさんシリーズ 第2回
たつとみ先生が小1から高校生まで10年以上かかわったLさん。シリーズ第2回です。
管理人が公認心理師をめざすにあたり、対策講座でお世話になった心理系予備校プロロゴスで知り合った たつとみ先生。
スクールカウンセラーとして活躍されているたつとみ先生に、経緯や体験を連載していただいています。
類似した事例に関わってはいますが、内容はフィクションです。
前回のお話はこちら⬇️
スクールカウンセラー 自閉的傾向に気づく
今回は前回に引き続き、自分がSCとして長期にわたって関わることとなったLさんという女の子のお話の続き…
Lさんは4年生になり、N先生との関係性も良く、保健室に行くことはほぼなくなっていた。
それに先立って今回4年生になるにあたり、N先生とはしっかりと連携をとらせて頂いた。
というのも3年生の途中11月ごろ、自閉的な傾向が強いと感じた自分は、素直にLさんのお母さんにそれをお伝えし、お母さん自身もはっきりして関わっていきたいと発達検査を受けられ、アスペルガー症候群(現在では自閉症スペクトラムに含まれます)と診断されたと伺ったからだ。
お母さんはさばさばとされていたが、SCとして実際にLさんにどのように関わっていけば良いか、また学校でどうしていくかということを改めてお話させて頂いた。
そうしているとお母さんから
最近、学校から帰ってくるときの『ただいま』の声が明るくなってきたんです。
というお話を伺った。
Y小学校の校長先生をはじめ、Lさんにどのように関わると良いのか、それを月に一回程度の勤務であるSCの自分と頻繁に連携をしていたおかげでスムーズに先生方との関わりは出来ていたように思う。
しかしながらLさんの友達関係は上手くいっていないことも多かった。友だちに
遊びに行きたい
と伝えても
忙しいから!
と断られるのだという。
お母さんがSCとの面談時に
ここ2~3日友達に
『KYなんよね~』? それって自分がみんなと違うってことなんでしょ?!
と言っていたんです。
自分が好きな番組とかに周りがついていけなくって、また逆に自分も周りについていけないとはなしていたんです…
と、話されてきた。また
どうやったらクラスのみんなと一緒になれるのか
とも言ってました。
と話されていた。
お母さんのLさんに対する悩みは尽きず、最近クラスの終わる時間が遅いのが気になるとか、未だにサンタクロースを信じているのですが大丈夫でしょうか…などという話にまで及んでいた。
スクールカウンセラー 体制づくり
そんな中でLさんの人間関係にも変化が出てきた。
最近バトンを習い始め、自分から積極的にやりたがっているのだとお母さんが話してくれた。どうやら同じバトンを習う5歳年上のお姉さんがいて、そのお姉さんにあこがれを持っており、それが原動力になっているのだと聞かされた。
SCとして、自分はお母さんに、周囲の子たちが4年生になり、自分と他人の区別が精勤的に付き始め、他の子との差が出来つつあるように感じられることから、Lさん自身の想いを受け止める体制づくりが必要であろうことをお伝えする。SCである自分からも学校の方にお話してみるとお伝えした。
ある日の水筒に
そんなある日、Y小学校養護教諭のT先生よりお電話を頂いた。
Lさんのお母さんから学校に連絡があり、夕食時に学校から持って帰った水筒のお茶を飲もうとした際に、中に鉛筆が入っており、それを飲み込みそうになったLさんが慌てて吐き出したということがあった。
幸い飲み込んだりはせず、ケガもなく大事には至らなかったが、お母さんとしてはトラウマになって学校に行けなかったり、外に出られなくなるのではないかと心配になり学校に連絡されてきたそうだ。
お母さんは次の日から学校に行けなくなることを心配していたが、以前から欲しくて祖母に誕生日で買ってもらう約束をしていたものが昨日お店に届いたと連絡があり、それを取りに出かけることも出来、気分転換も出来たのか、ご両親の心配をよそに一人でいつも通り登校できたと安心されていた。
養護教諭のT先生には、学校内でフラッシュバックがあるかもしれないので注意してみておいてくださいとお伝えはした。
お母さんにもその旨お伝えすることとなった。
その後、事件の経緯もわかり、Lさんを狙って水筒に鉛筆が入れられたわけではないことがわかった。
SCである自分からは、食べることに関して経過を見てもらい、何かあったら連絡してもらうようお願いした。
実際にLさんは数日後からご飯が食べられなくなった。
一口分のおにぎりを、何時間もずっと間で呑み込めないほどになっていた。口の中はドロドロになっているのだろうけど、口が開けられない状態になっていた。
T先生からは
唾も飲み込めないので、細菌などが心配です
と伺った。
スクールカウンセラー としての提案
SCから、
- 食べられるものだけ食べること
- 具体的に鉛筆は入っていないこと
などを確認し、食べても大丈夫だということを示すことなどをお話しした。
また、お母さんにはLさん自身が食べられないことが悪いと考えてしまい、自己嫌悪に陥る可能性があることなどをお伝えする。
- 実際になかなか食べられないとは思うが、まったく食べられていない訳ではないので、今口にしているからオッケーだと伝える
- 出来ていることに目を向ける
など、といった関わりでLさんにかかわってもらうようお伝えした。
その後、学校の給食についてはほとんど食べられなくなっていたが、ご飯やおかずをそれぞれ一口ずつだけにしてもらうことによって、少しずつ口に入れられるようになっていった。
引き続き学校と協力して、食べられないのが悪いのではなく、少しずつ食べられるのが良いのだという関わり方をしてもらうことが大切だとお伝えした。
お母さんからもT先生にその旨を伝えてもらい、うまくLさんの気持ちを置き換えていくことを確認した。
忘れられないことは 良いこともある
この水筒事件について、のちにLさんは忘れられないと悩んでいることがあった。
しかし、こうした事件は忘れるのではなく、忘れられないことは同じことを繰り返さないために確認出来たりと、良いこともあるんだと、あまり良くないイメージを良いイメージに変換できるようにお話ししてくださいとお母さんにも学校側にもお伝えした。
その後、しばらく経って昼休みにLさんの様子を見に行った際、Lさんは他の子が食べ終わった後も給食を食べていた。
掃除時間も食べ続け、5時間目前に終えていたが、担任の先生が上手く関わり、それでも良いという状況を教室でも作り出し、Lさんの気持ちの置き換えがある程度上手くいったようだった。
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次回は、Lさんの中学校への入学前後から書きたいと思う。
たつとみ先生
いつもありがとうございます。
何気なく飲んだ水筒からとがった鉛筆が出てきたら…
想像しただけでもゾッとしますね。
Ⅼさんは本当に怖い思いをしたことでしょう。
特性のあるお子さんなので、一度恐怖が刷り込まれてしまうと修復に時間を要す場合も多いかもしれません。
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Ⅼさんが事件後一度はふつうに登校しているのにもかかわらず、たつとみ先生は「食べることに関して経過を見てもらい…実際にLさんは数日後からご飯が食べられなくなった」と書いておられます。
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以前の記事でも感じましたが、ある事象が起こると、それに対する子どもの予測される反応を先に示しておられ、長年のSCとしての実績がなせる技だな…と思わされました。(記事は下に⇩)
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わたくし事ですが、県の公認心理師会に所属し、教育分野のZoom学習会に毎月参加しています。
「『傾聴ばかりで具体的な案がないSCさんは困る』という話を聴きます」と、SCのSV(スーパーバイザー)さんから伺いました。
傾聴のみでなく、今後予測される行動などを提示したり、それに対する提案をしていったりするのも、SCとして求められる大切な任務の一つだと感じます。
研鑽はしていかなくてはなりませんね。
.次回も楽しみにしています!
たつとみ先生の希望で、感想をお待ちしています。
たつとみ先生に届きます。あたたかいメッセージを!
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感想をお寄せくださるとうれしいです!
まだまだお話は続きます
スクールカウンセラーとしてのご体験を紹介できて
感謝です