エンターテイナー
勤務園の自治体の幼保一元化が進んで来たのは2014年頃から。幼稚園で働き出した当初3年間は、幼稚園教諭免許を持つ人から優先的に採用されていた。
(現在は、在籍した自治体の園では保育士資格のみ保有でも、採用条件はほぼ同じ)
保育士資格は保有していたものの、幼稚園教諭免許がなかった頃の幼稚園での採用の連絡は、3月23日、24日、遅い時は27日辺りになった。
特別支援担当講師は、3月の春休み1週間ほどは出勤がなかった。3学期も終わり、春休みに突入している頃、今や遅しと自宅で電話が鳴るのを待っていたものだ。
いたたまれない焦燥感にかられ、自宅のピアノで「エンターテイナー」という曲をエンドレスで弾いた。(作曲者 スコット・ジョブリン アメリカ)
♪ タラタターン タターン タターン
タラタタラタターン タターン ターン …
軽快でリズミカルなメロディーに、焦りと期待の気持ちを乗せた。
早く電話掛かってきて!
仕事、楽しかった!
春からも子どもたちと遊びたい!
「エンターテイナー」の有名なフレーズをテレビやラジオなどで偶然耳にすると、あの時の春を待つ気持ちがよみがえってくる。
3月になると、「今年もエンターテイナーの季節がやって来たか・・・」と
採用を待つ間、毎年3年続けて弾いた。
何度も何度も弾くので楽譜を覚えてしまい、譜面もいらなくなり、3年目にもなると、随分と演奏は上達していたかもしれない(笑)
教員免許のお陰で、年度末になってヤキモキして待たなくてもいい。身の振り方は決まっている。
頑張って免許を取って良かったなと、しみじみ思うのである。
教員免許が取れて、採用の打診を早々にいただけることは、本当にありがたいのだ。
雇用のはざまで
保育士資格や幼稚園教諭免許を取ると、1月、2月に来年度の雇用希望調査の用紙が人事から届く。
(正規雇用で既に採用されている教員は別)
担任を希望か、特別支援担当の希望か、
預かり担当と呼ばれる延長保育の担当を希望するか、預かりをするなら週何回希望か、などを記入する書類である。
資格や免許をもたない先生には、その書類は来ない。筆者もかつて保育士資格がありながら、幼免がないためにその書類は来なかったのだ。
職員室にいるとき来年度の更新の話になると、「蚊帳の外」にいるようで淋しかった。
数年後、更新希望調査の書類が届くようになって、やっと一人前の先生になった気がしたものだ。
資格や免許をもたない同僚の先生達が、焦りや不安でイライラして愚痴ったり、あきらめにも似た遠い目をしたりしていたのは、痛いほどよくわかった。
きっと彼女たちも辛かったのだ。
「今まで他の先生と同じように仕事をしているのに」と、存在意義が根底から揺らぐような気になるからかもしれない。
働く人の仕事ぶりもさることながら、やはり資格や免許がものをいうのだ。
「早く教員免許を取ろう!」と強く決意した大きな要因でもある。