はじめに
前回の②構成編では、書き始める前に「設計図」を作る手順をお伝えしました。
見出しを決め、引用を集め、どの経験と結びつけるかまで置き場所を決めておく。ここまでできれば、レポートは8割完成している、というお話でした。
今回は、いよいよ残りの2割、実際に文章を組み立てていく段階に入ります。
「設計図はできたけど、いざパソコンに向かうと、やっぱり手が止まってしまう」―そう感じる方も、少なくないと思います。私も、設計図を作る作業には慣れていても、それを自然な文章につなげる部分では、何度も書き直しをした経験があります。
この回では、A評価をいただいた2本のレポートを例にご紹介します。
一つは、前回もお伝えした道徳教育のレポート。
もう一つは、今回はじめてご紹介する、教育相談のレポートです。
教育相談も、道徳教育と同じく、教員免許取得には欠かせない必修科目です。実は一番はじめに書いたレポートは、この教育相談でした。
当時幼稚園教諭としての実践を伴っていたぶん、経験と結びつけやすく、一番書きやすい科目だったからです。このレポートがA評価で返ってきたとき、「この書き方で大丈夫なんだ」と、初めて自信を持てたことを覚えています。
科目が違っても、本文を組み立てる型は同じです。この2本を比べながら見ていくことで、その型の汎用性を実感していただけると思います。
「引用をどこまで書けばいいの?」「自分の考えはどこに入れるの?」「感想文とレポートは何が違うの?」―そんな疑問に、これから一つずつお答えしていきます。
第1章 「引用→経験→考え」を、実際の文章にする
前回の②構成編では、見出しごとに「どの引用を使うか」「どの経験と結びつけるか」の置き場所だけを決めておく、というところまでお伝えしました。今回は、その置き場所に、実際にどう文章を流し込んでいくのかを見ていきます。
例として、A評価をいただいた道徳教育のレポートから、一部を抜き出してみます。
「人間が道徳的生を送るためには良心の声に服従せねばならず、たとえ思うような結果を出せなかったとしても、良心に基づいて為された行為は超地上的世界の目的のためには大きく寄与する」(田中,2006;82)
ここまでは、引用そのものです。教科書の言葉をそのまま持ってきているだけなので、この一文だけでは、正直まだ「誰でも書ける文章」でしかありません。
この直後に、こう続けました。
『筆者は平日夕方や週末、僅かな寸志で地域の小学生達に勉強を教えている。時間や資金を要しても小免を取得し、子ども達により良い指導ができればという「良心の声に従って」の受講だ。』
引用の中にあった「良心の声」という言葉を、そのまま自分の経験に橋渡ししています。ここがポイントです。引用と経験のあいだに、共通のキーワードを一つ置いておくと、読み手は「なるほど、この引用はこういうことだったのか」と、自然に理解できます。
逆に言うと、引用と経験のあいだにキーワードの橋がないと、文章がぶつ切りになってしまいます。「〜という研究がある。ちなみに私は〜」といった具合に、話が急に飛んでしまうんですね。これ、初期のレポートでよくやっていた失敗でした。
橋を架けるコツは、そんなに難しくありません。
引用の中で一番大事な言葉を一つだけ選び、その言葉を使って自分の経験を語り始める。それだけです。
今回の例なら「良心の声」でしたが、これが「自己実現」だったり「発達課題」だったりと、レポートによって変わってきます。
さて、経験を書いたあとには、必ず「考え」を添えます。今回の例では、こう締めくくりました。
『フィヒテの思想は、時空を越え日本の一市民にも道徳教育思想を届けている。』
引用→経験、で終わってしまうと、単なる体験談になってしまいます。でも、そこに一言「考え」を添えるだけで、レポートとしての体裁が整うんです。
この「考え」の部分、そんなに長く書く必要はありません。一文で十分です。むしろ長く書きすぎると、感想文っぽくなってしまう。
このあたりは、次の第2章で詳しくお話しします。
センセースタイル 
